AI 推論を使う
カメラ映像に AI モデルを適用する推論デバイスの状態確認と、閾値・間隔の調整
AI 推論デバイスは、カメラの映像に AI モデル(ONNX)を適用し、その結果を数値として蓄積する仮想デバイスです。物理的なセンサを増やさずに計測点を増やせる、AI 版のソフトセンサと考えてください。
蓄積される値はセンサとまったく同じ扱いなので、可視化の方法もセンサと共通です(→ センサの設定)。
このページは設定項目の説明です。 AI 推論は AI アプリの画面からカメラに追加し、結果・設定もその画面で扱います。
| タスク | 蓄積される値 | よく使う metric_key | 対応する AI アプリ |
|---|---|---|---|
| 物体検出 | 閾値を超えた検出の件数 | object_count |
物体検出(汎用) |
| ナンバープレート読み取り | 読み取れたプレートの枚数 | plate_count |
ナンバープレート検知 |
ナンバープレート読み取りだけは数値に加えて、読み取った番号そのものがイベントとして残ります(→ ナンバープレートを読み取る)。
追加の手順は AI アプリを使うを参照してください。
モデルの状態を確認する
AI アプリの詳細画面の「情報」タブに、モデルの状態と最新結果が表示されます。
| モデル状態 | 意味 |
|---|---|
| 準備中 | 設定を受け取り、実行の準備をしている |
| ダウンロード中 | モデルファイルを取得している。初回や大きなモデルでは時間がかかります |
| 実行中 | 正常に推論が動いている |
| エラー | モデルの取得・読み込みに失敗した。URL やネットワークを確認してください |
モデルの読み込みに失敗した場合、エッジPCは 30 秒間隔で自動的に再試行します。一時的なネットワーク断なら、そのままでも復旧します。
最新結果の表示はタスクによって変わります。
- 物体検出: 検出件数(例
3 件)と、最も確信度の高い検出の確信度 - ナンバープレート読み取り: 直近に読み取った番号と確信度(例
品川300あ1234 98%)
まだ結果が届いていないときは 結果待ち と表示されます。
推論パラメータを調整する
| 設定 | 内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 時系列 DB へ保存する | オフにすると分析への数値送信を止めます(画面上の最新結果表示は継続) | — |
| 閾値 (0-1) | この確信度未満の結果を捨てます | 誤検出が多い→上げる(0.6〜0.8)/取りこぼす→下げる(0.3〜0.5) |
| 間隔 (秒) | 推論を実行する間隔 | 人の出入りなど→1〜5 秒/緩やかな変化→30〜60 秒 |
| 撮影幅 (px) | ナンバープレート読み取りのみ。文字を読むために撮り直す解像度 | 既定 1280。番号が読めないときは上げる(320〜3840) |
| 車が写っているときだけ読む | ナンバープレート読み取りのみ。車両検出を先に掛け、車の中にあるプレートだけを採ります | 既定オフ。看板や標識を誤って拾うときにオン(CPU 使用率が上がります) |
入力後、「保存」 をクリックすると設定がエッジPCへ送られます。モデルを読み込み直す必要はなく、次のサイクルから効きます。
モデルを切り替える
推論デバイスの設定の 「モデル」 で、同じタスクの別のプリセットへ切り替えられます(例: YOLOX-Nano → YOLOX-Tiny)。選べるのは、そのエッジPC に入っているモデルだけです。ほかのモデルは エッジPC の「AI モデル」 から入れてください。「切り替え」 を押すと、エッジPC が新しいモデルを読み込み、次のサイクルから結果が変わります。
- 物体検出とナンバープレート読み取りのように、タスクをまたいだ切り替えはできません。
- URL で指定したカスタムモデルの推論デバイスは、この欄が出ません。
使えるモデル
プリセットは商用利用可能なライセンス(Apache-2.0)のモデルだけを掲載しています。
| プリセット | タスク | 特徴 |
|---|---|---|
| YOLOX-Nano | 物体検出 | 最も軽量。ラズパイなど非力なエッジPC 向けです |
| YOLOX-Tiny | 物体検出 | 標準。まずはこれで試すのが無難です |
| ナンバープレート読み取り(日本・地名まで) | ナンバープレート読み取り | 地名・分類番号・ひらがな・4 桁をまとめて読みます |
| ナンバープレート読み取り(日本・4桁のみ / 軽量) | ナンバープレート読み取り | 4 桁の数字だけを読みます。モデルが小さく誤読も少ないです |
ナンバープレート読み取りはプリセットのみで、URL 指定には対応していません。それ以外のタスクでは、任意の .onnx モデルを URL で指定できます。その際はモデルの種類(YOLOX(物体検出))も選んでください。入力の渡し方と出力の読み方は種類ごとに違うため、合っていないと結果が壊れます。SHA256 も入れておくと、エッジPC がファイルの改ざんを検証します。
判定ルールで「現場の問い」に答える
検出できたかどうかではなく「危険区域に何人いるか」「棚が空のまま何分経ったか」を知りたい場合は、判定ルールを使います。検出結果を絞り込んで数値にするしくみです。AI アプリの詳細画面で 「ルールを作る」 を押すと作成画面が開きます。
| 種類 | 記録される値 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 件数を数える | 条件に合った検出の件数 | 「危険区域に何人いるか」「駐車場に何台停まっているか」 |
| 在/不在を見る | いる = 1 / いない = 0 | 「区域に人が入ったら気づきたい」「棚が空のままになっていないか」「20 人以上で混雑とみなす」 |
ルールごとに次を指定できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | グラフ・表・写真に出す名前です(例 入口の人数) |
| 数え方 | 何件いるか(件数) / いるか・いないか(在/不在) |
| 対象 | 人 車 などを選びます(YOLOX のプリセットでは 80 種類から選べます)。何も選ばなければすべてが対象です。カスタムモデルではラベルをカンマ区切りで入力します |
| 区域 | 推論に使った最新のフレームの上をドラッグして枠を引きます。引かなければ画面全体が対象です。「画面全体に戻す」 で解除できます |
| 確定までの秒数 | 「在/不在」のみ。この秒数だけ状態が続いたら確定します。1 フレームだけの誤検出で値が振れるのを防げます |
| 「いる」とみなす件数 | 「在/不在」のみ。この件数以上写ったら「いる」とします。空なら 1 件以上です。混雑(20 人以上など)の判定に使います |
| 「いる」になった瞬間の画像を残す | 「在/不在」のみ(既定でオン)。いない状態から「いる」に変わったとき、その瞬間のカメラの画像をメディアビューワーに保存します。解像度はカメラの「録画」タブの「保存サイズ」の「静止画」に従い、判定に使ったフレームとは最大 1 秒ほどずれることがあります。映像が届いていないときは判定に使ったフレーム(幅 640px)を残します。画像に枠は描き込みません |
在/不在のルールは、「いる」「いない」が切り替わった瞬間をイベントとして残します(起動直後の判定は含めません)。イベントは物体検出の詳細画面とクエリの events 表で 30 日間見られます。
分析やクエリで使う metric_key は自動で付きます。自分で決めたいときは作成画面の 「詳細」 で指定してください。作ったルールは一覧の 「直す」 で変更できます。
ゾーンに入ったかどうかは検出枠の中心で判定します。枠の一部がゾーンにかかっただけでは数えません。
ナンバープレートを読み取る
タスクにナンバープレート読み取りを選ぶと、カメラに写った車のナンバープレートを見つけて番号を読み取ります。処理はすべてエッジPC の中で完結し、映像はクラウドへ出ません(クラウドへ送るのは読み取った番号だけです)。
読み取った番号は次の 3 か所に出ます。
| 経路 | 内容 |
|---|---|
| 詳細画面の最新結果 | 直近に読み取った番号(例 品川300あ1234) |
| AI アプリ | 読み取りの一覧とエビデンス画像。写り続けている番号は記録し直さないので、1 台が停車し続けても 1 行です。30 日間残ります |
| トリガー | ナンバーを新しく読んだとき をきっかけに撮影ジョブを動かすか、カスタム処理へ渡します。外部システムとの連携に使えます |
特定の車両を見張りたい場合は、判定ルールのクラス欄に番号をそのまま書きます(品川300あ1234,練馬580す4649)。「在/不在を見る」と組み合わせると、その車が写っている間だけ 1 になります。
読み取れる範囲と精度
- 4 桁の一連指定番号(
12-34の部分)が読み取りの要です。ここが読めなかったプレートは結果として返しません(看板や標識の文字を車と取り違えないための判定でもあります)。 - 地名・分類番号・ひらがなは併せて読みますが、4 桁ほどの確実さはありません。 小さく写る文字なので、角度・距離・逆光の影響を受けます。地名まで必要な現場では、まず「検出の重ね合わせ」で読めているかを確認してください。
- 車体に書かれた文字を番号として拾うことがあります。 車名のエンブレムやバス・トラックの社番が、プレートと同じ「数字で終わる文字列」として通ってしまいます。1 台の車から 2 行出ることがあるのはこのためです。
- 車自体は既定では検出していません。 「車が写っているときだけ読む」をオンにすると車両検出を先に掛け、車の枠の中にあるプレートだけを採ります。ただし車種によっては車と認識できず、本物のプレートまで消えます。オンにしたら必ず読めているか確認してください。
- 読み取り結果からは区切りの
-と詰め文字の・を取り除きます(・・12は12、12-34は1234)。
読み取れないときは
| 症状 | 対処 |
|---|---|
| 何も返らない | 撮影幅を上げる(1280 → 1920)。カメラをプレートに寄せる・正面に近づける |
| 4 桁は合うが地名が違う | 「4桁のみ / 軽量」のプリセットに切り替えると誤読が減ります |
| 番号が揺れる | 閾値を上げる(0.5 → 0.7)。判定ルールの「確定までの秒数」でちらつきを抑える |
| 車ではない数字を拾う | 「車が写っているときだけ読む」をオンにする(読めなくなったらオフに戻す) |
| 車体の文字を番号として拾う | 現状では避けられません。プレートだけが大きく写る画角にすると減ります |
| CPU 使用率が高い | 間隔を伸ばす(5 → 10 秒)。撮影幅を下げる |
検出を映像に重ねて確認する
AI アプリの詳細画面の「結果」タブで、推論に使ったそのフレームに検出枠とゾーンを重ねて表示できます。「なぜ検出されないのか」「ゾーンの位置が合っているか」の切り分けに使ってください。
- 緑の枠が検出、青の破線がゾーン(区域)です。下にルールごとの現在値と、写っている物の内訳(例
人 3・車 1)が出ます - ライブ映像ではなく静止画です(推論は数秒おきなので、枠を映像に重ねるとずれるため)。隣に入力元カメラのライブ映像が並びます。「更新」を押すと最新の推論結果を取り直します
- 枠は表示のときだけ重ねるもので、録画やライブ映像には焼き込まれません
制約
結果が出ないときは
| モデル状態 | 対処 |
|---|---|
| ダウンロード中のまま | モデルのサイズが大きいか、エッジPCからモデル URL に到達できていません |
| エラー | モデル URL、ファイル形式(.onnx)、モデルの種類を確認してください。SHA256 を指定した場合はその値も確認してください |
実行中だが 結果待ち |
入力元カメラがオフラインの可能性があります。閾値が高すぎて結果が捨てられていないかも確認してください |
| 結果は出るが分析に出ない | 「時系列 DB へ保存する」が ON か、データが 7 日以内かを確認してください |
詳しい切り分けはトラブルシューティングを参照してください。